嶋村さん(左)と、台に置いた時にキューブがどう見えるかをチェックする古平さん。


 


真ん中が森さん。テーブルの端に置いた試作品を見ながら、これまでの経過と完成した喜び、そして課題をあれこれ話しました。


 


右端にタバコの箱を置いてみました。大きさをイメージしてもらえますか?



LEDはオン、ウムフィルムをオフにしたところ


 

メーカー、技術者、そしてデザイナー。たくさんの人の理解と協力を得て、プロジェクトを動かす。 それがどれだけ大変で、責任重大で、そして面白いか。この2年間で得たことが、試作品には詰まっています。

 

春間近の3月上旬、ある人にお会いすべく、東京南青山に行きました。 「お久しぶりです。」 技術者の、森芳久さんです。今回のプロジェクトの折々で、的確なアドバイスを下さいました。1年ぶりの再会です。試作品が完成したら、一番に見てもらいたいと思っていました。 アクリルの台と、日本板硝子ウムプロダクツのウムを挟んだキューブが完成したのが1月下旬。アクリル部分の製作は昭和化成です。削りだしの台は、細部まで磨かれていて角もしっかり出ている。いい仕上がりです。古平さんが指摘していたウムを手作業で切った時の手作りっぽさも、全体で見るとさほど気にならない。あとはシマエレの嶋村透さんに、電気系統の加工をしてもらうところまでこぎつけました。 LEDも取り付けた台が出来たのが2月初旬。アルファベットのキューブ26文字すべてが古平さんのもとにやってきたのが、2月21日。台にのせてみる。やっと、出来ました。「光る文字を浮かび上がらせる」という古平さんのアイデアを、具体的に形にした、試作品の完成です。アルファベットは、スイッチでオンオフします。 森さんは、これをどう見てくれるだろう。期待半分不安半分、古平さんの事務所へ一緒に向かったのです。

 

事務所に着くと準備万端、すぐに見られるようにセッティングしてありました。 「よくやりましたね。これならやりたいことが分かります」。森さんの第一声を聞いて、私たちは心の中で深く安堵のため息をつきました。 「技術者は、提出されたアイデアが実現可能か、頭の中で確認出来てしまう。だから作らずとも『出来る』とコメントして終わりにすることがままあります。でも、技術者以外の普通の人は、実物がないと分かりません。『出来ますよ』と言われても、やっぱり目の前に実物がないと不安でしょう?実物は、多くの人を説得するために必要なのです。これなら、ユーザーも納得するゴールですよ」。 大勢の人に関わってもらって、やっとこぎつけることが出来た。ここまで来るのは大変でした。正直な気持ちを森さんに伝えると、 「それがプロジェクトです。関わる人が少人数なら、リーダーはいりません。みんなの妥協案でなく、みんなが満足するものを作ること、そしてより大きな力を引き出すのが、リーダーの役目なのですから。」 古平さんが、試作品製作の費用を出すと言ってくれたのが去年の始め。古平さんは今回、デザイナーであると同時にクライアントでした。 「それもいい経験だったはずです。ものづくりに徹することが出来たのですから。デザイナーやクライアントを兼ねようとしていたら、違う結果になっていたと思いますよ。プロジェクトには、技術に介入したり妥協せずに突き進むデザイナーがいることが、大事なのです。技術者の醍醐味は、デザイナーの望みにいかに応えていくかですから。」

 

この試作品を前にすると、完成するまでの試行錯誤を思い出すと同時に、課題も見えてきます。今回は時間の期限を設けませんでした。コストの管理も、商品化する時の大きなハードルです。商品は、ある一定の時間とお金で作らなければなりません。それでも森さんは、まず形が出来たことを認めてくれた。それが大きな喜びとなって、反省点も含めて次に活かせるというのです。 「やっぱり文字が変わって欲しいですね」。古平さんも私たちも、試作品を前にして考えたのは同じことでした。始めに考えていた、電気のコードに文字情報を仕込んで、ひとつのキューブでアルファベット26文字を映し出せたら、やはり一番ドラマティックで、ユニークです。光り方に関しては、文字そのものが発光しているようになると、最初のイメージに近づきます。そういったことも、この試作品があれば、技術者と一緒に発展させられるかもしれない。 試作品が私たちの目の前にやってくるまでの2年半、迷い、ぶつかり、興奮しながら、プロジェクトを進めてきました。協力してくれた多くの人と読者のみなさん、ありがとうございました。 タイトルの通り、材料と技術をお見合いさせることの面白さにはまった2年半。デザイナーのアイデアを実現する時にどうすべきか、古平さんと向き合うことで再確認できました。ものを作ることの面白さと責任、この二つを実感しました。課題を残したままですが、ここで一区切りしたいと思います。 試作品をもとに商品化できるかどうか、今はまだ分かりません。今後に関しては、ぜひ空想生活を見て下さい。進展があったときには、必ずここでお知らせします。

 

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