デザイナーの皆さんから「作りたいイメージ」を募集し、それを具体化することのできる材料と技術を見つけていきます。作りたいものを形にするために、思いもよらない技術や素材の使い方を一緒に考えてみませんか?進行は月刊誌「室内」と連動し、3ヶ月間での具現化を目指し、その後には商品化も目指します。
▲古平さんの最近作、「ロジック/ヴィジュエル:ルイ・ヴィトンの建築」。LとVがケースに細かく印刷されています。
▲古平さんの事務所で打ち合わせ中

▲日本板硝子ウムプロダクツ株式会社のウムシート。普段は不透明ですが、電源を入れると透明になります(下)
▲実験に使った材料です。ウム、アクリル板、LEDなど。
▲アルファベットのE1文字で実験してみました。底にLEDを入れて光を照らしています。(右)の写真が、ウムの電源を入れて透明にしたところ。
静電気でパウダービーズを引き寄せ文字の形をつくる実験と並行して、新たな材料を発見した空想スタッフ。試作品完成への新たな可能性が見つかった一方で、いつものようにデザイナーの古平さんと雑誌「室内」の担当者を交え今後の方針について話し合う会議で、またもや問題が起こりました。



「液晶や有機ELを使った実験をすることは、今後考えないのでしょうか?」
打合せを始めた途端、いつもの議論が始まりました。デザイナーである古平さんを始め、室内担当者もやはり静電気とパウダービーズを使っての実験方法に疑問を感じている様子。
「そもそも、新技術でないといけないというわけではないでしょう。どうして新技術なら相手は聞く耳を持って、既存技術では成立しないと決め付けるのか。デザインってそんなに魅力がないものなのだろうか?」

確かに、液晶や有機ELを使いたいという気持ちはわかります。
しかし液晶や有機ELメーカーに対して「デザインがいいから作ってください」というだけでは弱いのです。しかも莫大な費用も必要です。「これだけの市場がある、だから投資をして下さい」と言わないと、なかなか納得してもらえません。だからこそ、新規事業でないと、メーカーにとっては材料を供給するだけで、企画の売上分の期待しかもってもらえない可能性が高いのです。さらに今回は電気を組み込むだけに、感電の問題など電気用品取締法の問題も関わってきます。だからすぐには首を縦にふれないのです。

「デザインのことをわかっていないよ」と古平さん。
「そういう古平さんは、全体のプランをわかっていない!」と空想スタッフ。

相変わらずお互いの意見は平行線のまま。このままでは、プロジェクトを中止したほうがよいのではないか・・・そんな思いが頭をよぎりました。




「デザインって、こういうことだと思うんですよ。」
そう言って、古平さんは最近自身が手がけたルイ・ヴィトン社の本を取り出しました。
2冊の本が納まったプラスチックのケースに印刷された、
不思議な光り方をしている無数の「L」と「V」の文字。
「これは新しいインクも特殊な印刷技術も使っていない。既存の材料と技術の組み合わせで、ちょっと変わった見え方になっている。」
そしてさらに取り出した、通常の紙の上にトレーシングペーパーを載せた1枚のポスターからも、同じ考え方で古平さんが
デザインしていることがよくわかります。


ここで、なぜ古平さんにデザインを依頼したのか、もう一度原点に帰ってみました。
古平さんは、「ごく普通のものだけれども、格好いいものをつくりたい」という姿勢と、普遍的なものを作り出す手法を持っています。だからこそ、他ではない、古平さんと一緒にやってみたいと思ったはず----------。

そしてスタッフが見つけてきた新しい材料を思い出しました。
それは、
電気を流すと瞬間的に透明・不透明になるという、日本板硝子(株)の「ウム」調光ガラスです。もしかしたら、古平さんが見せてくれたポスターと本の延長のようなものかもしれない。早速、ONとOFFの状態を古平さんに説明しました。照明用に作られたものではないが、「透明」と「不透明」という切り替えがある。この「透明」と「不透明」を古平さんがデザインすることで、新しい展開が生まれるのではないか?

「やりましょう!出来ますよ!」
勿論、古平さんが下さった返事です。




早速、調光ガラスでの実験が始まりました。
まずは、アルファベットの「E」という一文字だけを光らす実験です。

「E」という文字に切り抜いたウムの底に白色のLEDを入れて、下から照らします。まずは「E」の文字が浮かび上がりました。そして調光ガラスに電流を流すスイッチをONにすると、
「E」という文字が透明に切り替わりました。ONにすると透明になる点が照明とは逆なのですが、透明と不透明の違いがはっきりとしたことは、これまでの実験との大きな違いです!

ウムは技術が完成されているというため、これまでの実験に比べ拡がりに限界がありますが、「小ロットに対応、加工が簡単、液晶やELに比べ安価、精度が上がる、開発コストがかからない」などの利点から考えると、商品として現実味がありそうです。早速、これまでの静電気実験と並行して、ウムを使った実験を進めることにしました。

 
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