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前回、静電気でパウダービーズを引き寄せ、文字の形をつくる実験を行った空想スタッフ。
この実験の様子は、アイデアの提案者であるデザイナーの古平さんにも見て頂きました。実験結果
に対し、古平さんは「え、これで終わり?」とびっくりした様子。古平さんが納得しなくてはプロジェクトは前に進めません。そこで、古平さんに改めて現在のプロジェクトに対するご意見を伺いました。

「“もの”には、いろんな要素が詰まっていると思います。一方に“機能や実用”があるとしたらもう一方に“趣味や嗜好”といった言葉で言い表せるものがあるとして、その両方にまたがって成立しているものが“デザイン”だと考えています。今回提案している「透明な箱に浮かぶアルファベット」に関しても、このバランスを考えてデザインしています。プロジェクトリーダー(空想スタッフ)にもそれを分かってもらった上でメーカーなどとやりとりをして欲しいと思っています。実験結果
を見て「あれでうまくいくのかわかならい」と思ったのは、“機能や実用”と“趣味や嗜好”のバランスがとれていないように思えたから。僕が読者代表なのだとしたら、他の読者のみなさんもあの実験を見たら、「あれ?」と思うのでは。実験の材料がチープだとか、そういうことが問題なのではなく、デザインのどこを守るべきなのかをわかってもらっているかどうかなんです。抽象的な言い方ですが「デザインの空気感」を改めて共有して、先に進みたいと考えています。」
前回の実験は、はっきりした形ではないものの粒子が動いたのは大きな一歩と考えていたスタッフに対して、古平さんにとっては、この実験を繰り返せば本当に完成に近づくのかと不安を残すものでした。それよりも既存技術の有機ELや液晶を使ったほうが、イメージにかなり近づくのではないかと・・・。

古平さんのアイデアを形にしようと進めてきた連載も今回で9回目、その大半を技術に関して追いかけてきた私たちは技術者の立場にたっていたのかもしれません。実験に協力してくださっている岡安泉さんがおっしゃった「古平さんのクリエイティブなビジョンに技術が追いついていないのが問題なんだと思う」という言葉が、私達の状況をうまく言い表してくれました。確かに、技術者の視点から見れば実験の結果
は成功といえても、デザイナーの視点から見たときには満足できないものだったのでしょう。でも、ELや液晶のかけらをメーカーに持っていっても説得力は生まれません。表現したいこと、その道筋をうまくプレゼンテーションして、ユーザーを見方につけてこそ、このプロジェクトは先に進めると思うのです。
ELや液晶を使って透明なガラスに文字を浮かべることは、技術的にはより近道です。しかし、それでは商品としての強さに欠けるのでは、という思いが空想スタッフにはあります。その一方で、今の実験を追いかけるだけでは、商品化にはほど遠いことも分かっています。そこが大きなジレンマで、両立させるのは難しいということを痛感しています。値段や技術など様々な制約の中で何ができるかを考えないといけません。
ELや液晶を選択肢として全く考えていないわけではなく、現時点ではあえて図の一番上の「実験モック」をソニーの森芳久さんが教えてくれた「最初のゴール」にしたいと思っているのです。それは未完成でも人を惹きつける力を持っていると判断したからです。だからこそモックの完成を急がなければ。

古平さんと私たちが最後に見据えているゴールは、図の一番下の「商品」であることで同じはず。今私たちはこのプロジェクトを、秋までには何らかの形にしたいと考えています。期限を踏まえた上での最初のゴールが、実験を形にすることなのです。まず最初のゴールに着いたら、次のゴールに向けて発信する力も蓄えられていると思います。古平さんはデザイナーであり読者代表です。その古平さんが納得しなければ先に進めない。ここから先をよりいい形で進めていくために、デザイナーである古平さんと「デザインの空気感」を共有しながら、試作品の完成を急ぎたいと思います。
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