
「既存の用途にとらわれず、インテリア、家電、雑貨など幅広い分野での提案をお待ちしています」 と、ステンレス販売カンパニー開発企画推進チームマネジャー・農澤英夫さん(写真左)、 開発営業部長・松本和也さん(写真右)。
stainless、つまり「さびない」という意味をもつステンレス。
さびにくくて熱にも強く、お手入れもしやすいステンレスは、水まわりで目にすることが多い素材です。
キッチンの天板をはじめ、冷蔵庫や炊飯器などの家電製品、鍋や食器にも使われています。
また、そのシャープな印象から、インテリアにも積極的に取り入れられてきました。
シェルフやワゴンといった家具から、ティッシュケースやダストボックスなどの生活雑貨まで、いまやステンレス製品は、生活のさまざまな場面に溶け込んでいます。
そんなステンレスの楽しみ方をさらに広げてくれそうなのが、高砂鐵工の「エンボスステンレス」。
表面にさまざまな模様を施したステンレス鋼板です。
エンボスステンレスは、表面に凹凸をつける技術を使って、立体的に模様を浮き出させたものです。
一般にステンレスといえば、鏡のような光沢や、よく研磨されたなめらかな表面を思い浮かべることでしょう。
こうしたクールな質感もステンレスの魅力のひとつですが、反面、硬く冷たいイメージを与えることもありました。
「さびにくいというステンレスが持つ高耐食性を維持しながら、模様をつけることでデザイン性を高め、やわらかい印象を醸し出しました」
と、語るのは、開発企画推進チームの農澤英夫さん。
高砂鐵工では、昭和41年からエンボスを開発し、その後、昭和50年代初めにキッチンの天板用をスタート、いままで実に100種類にも及ぶデザインを製作してきました。
水玉やスジ目をはじめ、イチョウやモミジ、花などの繊細な絵から、亀甲や中華などの伝統的な図柄まで、
「これがステンレス?」
と思うような美しい模様の鋼板を並べて見比べてみると、同じ素材とは思えないほど印象が異なります。
エンボスステンレスの魅力は、デザインの美しさにとどまりません。機能面でも、さまざまな優位性があります。
エンボスステンレスは表面に絵を描いているわけではなく、素材そのものを加工しているので、ステンレスとしての機能を損なうことはありません。
もちろん塗料がはげ落ちるなどの心配も不要ですから、衛生面でも安心して使うことができます。
また、表面がなめらかなステンレスは、傷がつきやすいのが難点でした。
これに対してエンボスステンレスは、表面に模様を施した分、傷が目立ちにくくなるのです。
このほかにも、エンボス加工の処理の仕方によっては、新たな機能を付加することができます。
たとえば、金属を塑性変形させると硬くなる特性(加工硬化という)を利用して、従来の強度はそのままで板厚を薄くすることができます。
つまり、堅牢性を確保しながら軽量化を図れることから、携帯電話やデジタルカメラにもエンボスステンレスが採用された実績があります。
また、大きな凹凸をさざなみ状につけたタイプは、ショーケースの棚板などに使われています。
接触面積を小さくできるので滑りがよくなり、静電気を抑えて商品がピックアップしやすくなるのです。
さらに、高い凸部分をつけて滑り防止機能を付加したタイプもあります。
これは床用のエンボスステンレスとして、
「すべらんなー(R)」
という名で商品化され、店舗の床やマンションの階段などに使われるほか、最近では高いレベルの衛生・安全が求められるクリーンルームの床材としても人気が高まっています。
このようにさまざまな機能を持つエンボスステンレスは、ステンレスの用途をさらに広げてくれそうです。
松本和也さんは、その可能性に期待を込めてこう語ります。
「ステンレスは鉄と違ってさびにくく長く使っても損耗が少ないため、金属のなかでもリサイクル性が極めて高い。
リサイクルルートも古くから確立されており、まさにいまの時代に合った環境にやさしい素材ともいえます。
既成概念にとらわれず、おもしろいアイデアをどんどん取り入れて、この素材をもっと多くの方に使っていただきたいですね」

比較的、小ロットでも生産できるのが同社の強み。 高砂鐡工のショールームでは、エンボスステンレスの多様な可能性を見ることができます。