
新日石プラスト株式会社 ミライフ推進室長 石田 大氏。背景のパーティションに張られているのが「ミライフ」。 同社のエントランスのために、特別に作られたパーティションです。 「ミライフ」が発光源を囲み、光を和らげる効果を発揮しています。
「まるで薄い障子紙のような質感。紙のようであるが、紙ではない。風にそよぐ絹のようなやわらかな肌ざわりと光沢。絹じゃないの? はい、シルクでもコットンでもありません」 いきなりクイズみたいですが、これ、実はれっきとしたプラスチック製品。新日本石油(株)の子会社の新日石プラスト(株)が「限りなく布に近い外観、和紙に近い扱いやすさをもつ新素材」として2002年から発売している「ミライフ」なのです。
石油精製の過程でできたナフサから作られるポリエステルを、繊細なファブリック状にして、それをさらにタテ・ヨコに重ねて圧着したもの。難しくいうと、繊維配列・延伸積層技術を応用した繊維積層体ということになります。 繊維を機械的に織ることなく積層しているので、いわゆる「織っていない布」不織布の一種ともいえますが、巷に溢れる大量生産のただの不織布ではありません。 従来の不織布でいちばん軽いものは平米あたり20グラムくらいでしたが、最も軽い「ミライフ」はわずか5グラム。信じられないほど薄くて軽い。表面が平滑なため紙に近い印刷適性をもち、折り目加工もできるという点も、これまでの不織布とは違うところです。 何よりの違いはその風合い。たとえば、しっとりとしたデザイン、淡いグラデーションで印刷された高級和菓子のパッケージ。中のお菓子がうっすらと透き通って見えて、あたかもそれは平安王朝期の御簾のよう。捨てるのがもったいなくなるぐらいです。それでいてきちんとバーコード印刷にも耐える印刷特性は、商品パッケージとしての可能性を広げています。
その高級感あふれるテイストに注目したのは、日本人だけではありませんでした。世界100カ国以上に展開するブラインドメーカー、ハンターダグラス社は、同社のブラインドの2007年モデルに「ミライフ」を採用したのです。「ミライフ」は同社独特のハニカム構造ブラインドの表層材に使われています。「ミライフ」の意匠性、適度な光透過性、軽量、加工のしやすさなどが高く評価された結果でした。ほかにも欧州で、花束を包むフラワーラップとしての需要も生まれているといいます。 「ミライフは繊維がタテ・ヨコにきちんと整列した構造になっているので、不織布にありがちな目付けムラがありません。逆に整列した繊維が交差配列しているため、織布に近い高度な意匠感を持っています。 しかも、織布と異なり繊維の交差による凹凸がなく平滑性に優れており、上品な光沢があるのです。このあたりが高級な質感をもたらす理由の一つです」と話すのは、同社ミライフ推進室長の石田大氏。
しかし「ミライフ」が世に認知されるまでには、少しばかり時間がかかりました。研究は90年代にスタート、2000年には生産ラインを新設したものの、糸を安定的に整列する技術が難しく、量産出荷までに2年。いざ発売してみると、今度は売る苦労が……。 「世界に唯一の性能と機能には自信はありますが、値段はけっして安くはない。しかも布と紙の中間のような独自性があるので、従来の加工機械に通りにくい」(石田氏) 最初はその薄さと平滑さから両面テープの基材として注目されました。「ミライフ」を使うと従来の製造工程を半減させるという効果があり、それが素材コストを十分に吸収したのです。 さらに意匠性が注目されるようになって、いよいよ「ミライフ」の本領発揮。「インテリア、包装資材としての可能性を広げると同時に、異素材との組み合わせなどで、私たちの気づかなかった用途が広がれば面白いですね」と、石田さんは語っています。

アクリル板に「ミライフ」を張り付け、中に照明を入れればインテリアに。この他、「障子紙」など、インテリア・インテリア部材としての可能性は数多く検討されています。

薄くて、水ぬれに強く、色が付けやすい。そして高級感もある。「ミライフ」のこうした特性が活かされているフラワーラッピング。既に実用化が進んでいる用途の一つです。