空想マガジン
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ウインドーラジエーター開発秘話

森永エンジニアリング(株)住宅環境事業部 土肥明人さん

デザインの革新で、
エリアを越えた新しいユーザーを獲得した
ウインドーラジエーター開発秘話

森永エンジニアリング(株)住宅環境事業部 土肥明人さん

寒い冬でも暖房効率がよく、室内でも厚着せずに過ごせて、省エネにもつながる高気密高断熱住宅が注目されています。 しかし、高気密高断熱にも課題はあります。「部屋全体は暖まっているのに、窓際はスースーして寒い」という声です。北海道のような寒冷地では、欧州のような温水セントラルヒーティング方式を採用した住宅でも放熱器が設置されていない場合、たとえ開かない「嵌めごろし」のペアガラスを用いても、窓の表面は10℃以下になることもあるといわれます。その冷気が室内に忍び寄る現象は「ダウンドラフト」と呼ばれます。またこうした環境では、室内外の温度差によって生まれる窓の結露も悩みの種です。
ダウンドラフトや結露を防ぐためには、窓際・窓下にパネルヒーターを設置するのが効果的。その専用商品として開発されたのが、森永エンジニアリングの「ウインドーラジエーター」です。最近、寒冷地のみならず、補助暖房具として、全国各地から注目を集めるようになりました。発売以来、累計販売台数は1万台に達しようとしています。

「天窓からの冷気が寒い」という
ユーザーの声を形にした初期型

ヒットに繋がったのは、日常の困ったところを解決しようというきめ細かい発想力ですが、デザインの革新が大きな効果を発揮しました。
1994年に発売された初期型は、「天窓からの冷気が寒い」という温水式輻射暖房器に対する、お客まさからのクレームに対応したもの。つまり、何より実質性を重視していました。放熱フィンに四角いケーシングをかぶせただけの素朴な形状。デザイン的にはけっして「格好のいいものではありませんでした」と、同社住宅環境事業部・土肥明人さんは振り返ります。
そこで、2004年から空想生活とのコラボレーションで、インテリア性の高い暖房補助具へのリニューアルが模索されました。

ウインドーラジエーター初期型

ウインドーラジエーター初期型のデザイン

家具と暖房器の「異色ハイブリッド」でリニューアル

初期型のユーザーからは、「もう少し洗練されたデザインを」「移動して持ち運ぶには重すぎる」「横幅が伸縮自在だと使い勝手が向上するのに」といった声が寄せられました。もともと初期型自体、「窓際が寒い」というユーザーの声を形にしたものでしたが、その声は機能に反映されるに留まっていました。リニューアルにあたっては、製品のデザインや使い勝手についてより突っ込んだユーザーとの会話が交わされました。
そうした意見をデザインに集約したのは、木工家具デザイナーの小泉誠さん。ウインドーラジエーターのリニューアルは、家具と暖房器の「異種ハイブリット」のプロセスでもあったのです。
重量を軽くするため、初代機の鉄製ケースをアルミのフィンに変更。その仕様変更が好結果をもたらしました。フィンの溝が上から見ると美しい直線となり、全体のデザインをよりスタイリッシュなものにしたのです。

現在のウインドーラジエーター

デザインの細部までとことんこだわった

リニューアルのプロジェクトでは、全体の形状や色彩だけでなく、細部のデザインにもこだわっています。たとえばヘッド部。U字型の収まりの部分に使用時にはオレンジ色のLEDランプが点灯します。U字の丸み、LEDの色は何度も検討が重ねられました。ヘッド部の下の小さな台座にも、角錐になるような美しい面取りがされています。
「部屋の中に置いたときにこそ、生きるデザインですね。窓やカーテンといった垂直のラインのなかで、ウインドーラジエーターの豊かな表情は、よいアクセントになります」(土肥さん)

現在のウインドーラジエーター

結果的に同製品は、2005年度のグッドデザイン賞を受賞しました。
これまでは多くは欧州からの輸入品を販売していた同事業部にとって、ウインドーラジエーターは初めての本格的な自社開発製品。新しいチャレンジだけに、まず社内上層部を説得する必要もありました。エレファントデザインがCGで制作した販促用ムービー(同社オンラインショップサイトで視聴可能)は、実は一般ユーザーだけでなく、上層部の意思決定にも役だったようです。
「これまでの製品は販路や人脈が限られています。寒冷地にこだわらず、全国レベルで商品を展開するためにオンラインショップを活用しました。そうした新しいマーケティングでは、空想生活のチャネルやコネクションをフルに活用させてもらいました」と土肥さんは振り返ります。

関東地区の顧客獲得に大きく貢献

2007年にはECサイト楽天の通販実績のうち、暖房器部門でトップに。用途はシンプルでありながら、個性的なデザインが可愛らしく、つい購入してしまうというユーザーが多いのかもしれません。
「機能性と地域性だけにこだわっていたら、ここまでは自由な発想できなかった。現在は関東地区のお客様が6割を占めるまでになり、自社開発製品を全国展開するうえでよい成功例となりました」と土肥さん。今後もラインナップを増やすなど、ウインドーラジエーター製品を大切に育てていきたい考えです。

商品化したウィンドーラジエーターの詳細はこちら

プロジェクトの流れ

1978年 森永エンジニアリング(株)、森永乳業(株)よりセントラルヒーティング関連機器の販売事業などを継承。住宅環境事業部が温水式輻射暖房器(スウェーデン製など)を販売。
1994年 北海道で一部のユーザーから、「部屋全体は暖まるのに、天窓からの冷気が寒い」などの声が寄せられる。北海道工業試験所と共同開発で「ウインドーラジエーター」商品化。クレーム対応商品という位置づけで大々的に宣伝はせず。
2004年2月 東京電力の展示会会場で、東電+エレファントデザインらの共同開発による、デザインにこだわった給湯器「デザインエコキュート」を知る。
2004年4月 エレファントデザインとの共同開発スタート。
2004年秋 プロトタイプ完成。
2004年冬 フィールドテスト実施。
2005年1月~5月 アルミフィン、伸縮機能、LEDインジケーターを含む細部と全体のデザインが固まる。
2005年10月 デザインを一新した「ウインドーラジエーター」(WR-1219)発売(同製品は2005年度グッドデザイン賞を受賞)。
楽天の同社直販サイト「Solaris World」でも販売を開始。
東京電力「Switch the design project」でも紹介される。
2006年5月 新日本様式100選に選定される。
2007年10月 定尺タイプなど商品ラインナップを拡大。
2007年 楽天の暖房器部門販売実績で1位。
2008年1月 発売開始以来、累計販売台数 9000台を突破。