名児耶秀美さん
「デザインは『美的造形性』だけで成り立っているものではないというのが、僕の考えです。どのようにつくるのかそしてつくれるのか、どれだけコストがかかるのか、どうすれば流通にのせられるか、値段はいくらにすればいいのか、使う人はそれを求めているのか……。たくさんの要素が、デザインには含まれている。だから面白いんですよね!」。
にこやかに、そして力強くおっしゃるのは、アッシュコンセプト代表取締役の名児耶秀美さんです。アッシュコンセプトのWEBには、同社は「世の中を元気にする会社」だとあります。それはつまり、デザインで世の中を元気にすると言うこと。「モノを創る人を、モノを造る人を、そして、モノを使う人を、大切にしていきたい」という同社が生んだブランドが「+d(プラスディー)」で、これまでに、内外で活躍する日本人デザイナー52人(組)と共に、50以上のプロダクトをつくり出してきました。
52人と50以上のプロダクト、これがどれだけすごい数字で、その背景にはたくさんの物語があるに違いないことは、読者のみなさんであればすぐにお分かりいただけると思います。このブランドの舵取りである名児耶さんの原動力の源になっているのは、やはり「デザイン」。大学在学時からアルバイトで髙島屋の宣伝部に所属し、そのまま就職。
「デンマークから招聘されていたデザイナーが手がけていた横浜店と玉川店のウィンドウディスプレーが、本当に素敵だったんです。彼に多くのことを教わりました」。
髙島屋での刺激的な経験のあと、名児耶さんは、総合家庭用品メーカーのマーナに入社します。
「ここで僕は、デザインでビジネスが大きくなるかどうかを実践し、体感しました。いいデザインかどうかには、商売として成り立つかどうかも肝腎です」。
マーナで数多くのアイテムを世に送り出し、たくさんのデザイナーに出会い、内外の見本市に足を運ぶなかで、名児耶さんに見えてきたこと、それは「日本のデザインはすごい」こと、そして「日本のものづくりもすごい」ということでした。2002年にアッシュコンセプトを設立した時、その2点を活かすことは、ごく自然なことだったのです。
「+d」のカタログやWEBを見ると、アイテムの紹介と同じぐらいクローズアップされているのが、デザイナーの紹介です。それも名児耶さんがブランドを始めるときに決めていたことでした。ディスクローズ(DISCLOSE)、つまり情報を開示することがこれからは大事だと考えたからです。
「デザイナーの名前はもちろん、デザインへの思いを消費者にしっかり届けたかった。デザイナーは僕にとって、0から1を生むことの出来る人。僕は『人』を見ず『デザイン』を見ます。僕にとっては、有名かどうかは判断基準になりません。ですから今も内外の見本市に足を運んで、いいと思ったデザイナーには自らコンタクトをとりますし、偶然の出会いから商品が生まれることもある。大学で講師をしたときに、学生とのワークショップから商品化が決定したものもあるぐらいです。もちろん、いわゆる売り込みも大歓迎です」。
デザインが持っている可能性、デザインが持っている大きな力を信じて前に進み続ける名児耶さんの話にはブレがなく、だから説得力があるのだと感じ入りました。
美の背景にあるものもトータルに考えられたものこそ、いいデザインであり、そのようなデザインが求められている時代が来ていることを、名児耶さんは実感していると言います。
「そしてユーザーが楽しめる商品であること、それこそデザインの大事な要素です。だからアッシュコンセプトでは、商品化に際してはユーザー調査を欠かしません。『仮説と検証』はとても大事なプロセスなのですから。本当は披露したくないノウハウだけど、これもディスクロージャーのひとつと思って(笑)、空想生活の読者にだからお伝えします」。
空想生活には大いに共感を覚えてくれているという名児耶さんにとって、これまでの「+d」はファーストステップだと言います。ファーストステップがジャパンデザイナー、メイドインジャパンの力を発信することに邁進する期間だとすれば、セカンドステップは、世界のデザイナーと共に今以上に世界を舞台に「デザイン」の力を発信すること。もちろんそこには、日本のデザイナーと日本のものづくりの力が含まれている。「もっともっと、いいものが生まれる環境をつくり、いいデザインをすべての国の生活者に届けたい」という名児耶さんの心意気が、これからもっと発揮されていくに違いありません。
ショールームの様子。
生活を楽しくしてくれる、彩り豊かな商品が並びます。