空想マガジン
デザインの舞台裏 第21回
建築家 増谷高根さん

今回ご登場いただく建築家の増谷高根さんは、大学卒業後建設会社の設計部に入社、その後劇場や図書館などの文化施設を手がける設計事務所に勤務し、2004年に独立。現在は東京杉並に事務所を構え、個人住宅の設計を中心に、店舗の内装なども手がけています。

増谷高根さん

増谷高根さん

すべての材料に魅力がある

ご存じの通り、建築設計には、構造となる木、鉄骨、コンクリートはもちろんのこと、内装材としても土、石、金属、布、紙など様々な材料が使われます。そのどれもに魅力があると、増谷さんは言います。
「多くの材料は自然から生まれたものですし、鉄やコンクリートのような一見自然材料とは言えなさそうなものにも、僕は自然の力を感じます。何というか、『生きている』感じがするのです。その生きている感じをそのまま空間に活かす使い方をしたいと、いつも考えています」。
そんな増谷さんが手がけたプロダクトが、「nami」という名のパーティションです。これは 「CUUSOO JAPAN BRAND」プロジェクトでも紹介している鳥取県の因州和紙を使ったもので、07年にリビングデザインセンターOZONEが企画した「仕切り」のデザインコンペティションへの公募をきっかけに、商品化への道を歩むことになりました。
「限られた面積でどう仕切るか」そして「空気をはらむようなものを和紙でつくってみたい」と考えた増谷さんは、和紙が単独で自立し、空間を仕切ることを提案。試作を手がけ、商品化に向けてやりとりを繰り返している谷口和紙㈱が「立体漉き」の技術に長けていることも、実現可能となる大きなポイントとなったそうです。「和紙を漉く際には水を使いますよね? 谷口和紙さんはその水の力を研究して、立体漉きを可能にしているそうなんです。それによって、貼るのでは無理な造形を生み出すことが出来る。僕が考える『自立する和紙』も、この技術を持つ谷口さんだから実現出来ました。漉き上がった時点で、すでに曲面が出来ているんですよ」。
増谷さんのアイデアと、谷口和紙の技術が出会って、和紙という平面から立体が生まれるに至った。その過程には様々な発見があったはず。ものづくりの面白さ、大変さが、増谷さんの話から伝わってきました。

nami

「nami」

建築もプロダクトも、スタンスは同じ

写真をご覧いただくと分かる通り、「nami」はほのかに光っています。デザイン当初は光ファイバーを光源に使うことを考えていたそうですが、コストなどの点からLEDを使うことに。
「ご覧になるみなさんが、『これ、どうなっているのかな』と思っていただけたら嬉しい。和紙はとても柔軟な素材で、いろんな発想を受けとめて力を発揮してくれる。入れる繊維の長さや漉く加減によって色々な造形が生まれる面白さもあります。住宅の設計や手がけた店舗で、特注のプロダクトをデザインしたことはありますが、商品化となるプロダクトはこれが初めて。初めて知ることもたくさんあって、とても刺激を受けました」。
建築とプロダクト、ものとしての大きさも完成するまでのプロセスも相違点がたくさんありますが、スタンスは変えませんでしたと増谷さんはいいます。
「多分最大の違いは、建築にはスタート地点で諸条件がたくさんあるんです。敷地の面積も決まっているし、法規で決まっていることも多い。その点、プロダクトはスタート地点では何でも出来る。だからって好き放題していいということではなくて、内側から導き出すべきなんだということを学びました」。
ものがそこに置かれることによって空間自体が変質するようなプロダクトを作っていきたいという増谷さんにとって、その第一歩となる「nami」。商品化まであと少し、私たちも楽しみにしています!

アイデアの種がたくさんある

「空想生活って面白いですね?」、取材を終えて一段落したところで、増谷さんから嬉しいコメントをいただきました。
「いやぁ面白いですよ。練られる前のアイデアの種のようなものがいっぱいあるでしょう? あれを見ていると、僕もチャレンジしてみたくなりました。実現はしていないけれども自分の中にあるアイデアって誰もが持っていると思うし、僕も持っている。そういうのをブラッシュアップするサイトになるんじゃないでしょうか」。
おっしゃるように、空想生活にはたくさんの種が、そしてたくさんの芽があります。増谷さん、そして読者のみなさん、どんどんこの種を育てて下さいね。