「日本とオランダ、両方でデザインを学んで、それぞれのデザインに対する考え方の違いを知ることが出来たのは、僕にとってとても貴重な体験です」と話すのは、寺山紀彦さんです。寺山さんは日本で建築とデザインをそれぞれ学んだ後に、オランダへ。アイントホーフェンでデザインを学び、さらにはデザイナーのリチャード・ハッテンや建築家のMVRDVの事務所でインターンとして在籍しました。
「リチャードの事務所は工房も構えていて、倉庫もある。僕はその倉庫に住み込ませてもらって」
倉庫! すごく寒そうな気がするのですが。
「寒い、ものすごく! 洋服を何枚も着込んで、寝袋に入って、さらにセーター被って、それでも寒かったです(笑)。でも10カ月間いるなかで、いろんな経験をさせてもらえました。MVRDVの事務所には、世界中から『建築エリート』達がやって来る。それもまた、刺激的な時間でした」。
ドローグデザインなどに代表されるダッチデザインは、90年代中頃から日本でも注目を集めています。寺山さんは日本とオランダのデザインの違いを、どのように感じているのでしょうか。
「たとえば携帯電話をデザインすることになったら、『どんな形にするか』『いかにきれいに作るか』ということを念頭に置くのが日本のデザインの特徴としてあると思います。オランダの場合は形から入るのではなく、『そもそも携帯電話って何だろう』ということを考えるところから始める。そして会話って何だろう、人と人が話す距離って何だろうとつながっていく。現象を見極めようとすると言えばいいでしょうか。どちらがいいということではなく、いろんな考え方、アプローチの仕方があることが分かったことが、僕にとっては大事です」。
2006年に日本に戻ってきた寺山さん。現在は出身地の栃木から東京に活動の場を移し、「studio note」を設立、プロダクトデザインを行っています。事務所で話を聞きながら、プロトタイプを見せてもらいました。そのうちのひとつが、「f・l・o・w・e・r・s」という名の定規。アクリルに可憐な花がポチ、ポチ、と並んでいるこれは、定規……?
「これ、花と花の間隔が1cmなんですよ」。
あー、本当だ! アクリルの板に広がる花畑が文房具だなんて、素敵です。
「栃木にいる時、実家の犬の散歩が日課になっていて。ほら、そんなに仕事もないですし(笑)。それで原っぱに行ったときに、咲いている花を見ていて、『等間隔に咲いていたら横になった時、身長計れるぞ』と思い始めたら一気にこの定規までアイデアが飛んで、最初のプロトは1日で作っちゃいました」。
この「f・l・o・w・e・r・s」、東京と福岡で行われる展覧会に出展されるそうなので、ぜひご覧になって下さい。寺山さんの事務所のホームページに詳細が載っています)。
寺山さんが空想生活にエントリーしているのが、「iden」という照明器具。これは明り、スイッチ、ランプシェードが一体に入っている電球なのです。LEDを使うことを想定しています。 「新しい技術って、どんどん使ってみたいし、デザインと一体になって進化していくものだと思います。アイデアって、考えることはいくらでも出来る。だけど個人のデザイナーが実現させようとしても限界がありますよね。『空想生活』はそこをサポートしてくれるシステムを構築している。この間iPhoneをアメリカから友人が持ってきていて見たのですが、本当にすごいし、ワクワクする。デザインと技術がピタッと合って、本当に欲しいものが生まれている。そういうデザインを、僕もこれから手がけていきたいと思っています」。