今から80年ほど前の1925年、デンマークのストルーアという小さな町にある、とある屋敷の屋根裏部屋で、 二人の青年がラジオの製造を始めました。その2年後、同じストルーアに工場を新設。その工場の名は、 「Bang & Olufsen(バング&オルフセン)」。そう、空想生活のユーザーだったら誰もが知っているあのメーカー は、いまもそのストルーアから、デザインマインドあふれる商品を発表し、揺るぎないブランドの力を 保ち続けています。
Bang & Olufsen(以下B&O)は「デザイン、パフォーマンス、クラフトマンシップ、ヒューマナイズ」を ビジョンに掲げ、歴史を育んできました。B&Oの商品の特徴は、そのビジョンのひとつであるデザインです。 マスに向けた商品ではないことを彼らは熟知し、B&Oとしてあるべき姿を、時代に合わせて作っている。 最新技術を無闇に追うことはしません。その点が、ハイテク好きの人には物足りないかも知れない。 しかし最新のデザインを作り出すデザイナーを起用する勇気を、B&Oは持っている。 そして我々人間の未来を見据える哲学=ヒューマナイズがある。ニューヨークや東京のような中心地でなく、 デンマークの小さな町にいることを、彼らは強みに変えているように見えます。 組織としての規模も売上も、大企業に比べたら小さい。ですが知名度、認識度という点においては、 名だたる大企業と肩を並べている。売上に対するブランドの価値が、 抜群に高いという見方が出来ます。根強いファンが付いていることで、存在はマスでなくても、 マスに向かってファンがメッセージを発してくれる。売上のために過剰な投資をすることなく、B&Oらしさを 見失うことなく企業の力を高いところで安定させている。それは素晴らしいことだと思うのです。
しっかりした哲学を持っていること、それは企業にとって大きな力です。時代の潮流をとらえ、新たな商品を作り出す。独自の姿勢は貫きつつ、変化には柔軟に対応し、時には大変貌を遂げることもいとわない。何が必要か、残すべき事と変えていくべき事を見極めることが出来るから、「伝統」と「革新」を同居させることが可能となる。社員はもちろん、ファンが「B&Oらしさ」とは何かを知っている、だから新商品を自信をもって世に送り出し続けることが出来るのでしょう。これって個人の活動にもあてはめることが出来るのではないでしょうか。自分の軸があって、新しいものを取り込むセンサーを持っていて、形にしていく行動力を持っている人、そういう人には自ずと注目が集まります。空想生活のユーザーやデザイナーも、そういう存在だととらえることが出来ます。一人一人が持っている「自分の軸」を束ねると、強靱です。足りない部分を補い合って、魅力はさらに光り輝くように工夫をして、ひとつのものをつくり出すことが出来る。
B&Oが次に見せてくれるのはどんな商品なのか、僕はこれからも楽しみにしています。僕たち空想生活もそういう存在でありますように。
この『Bang & Olufsen「From Spark to Icon」』は、創立80年を記念した社史のような一冊です。入手するのは難しいかも知れませんが、もしも見かけることがあったら、ぜひ手にとって下さい。また、Bang & Olufsenについて、『ホームシアターファイル』(音元出版)8月号でもお話しています。こちらもぜひ、ご覧ください。
6月27日(金)~29日(日)まで、六本木のAXIS Gallery(港区六本木5-17-1 アクシスビル4F)にて、Bang & Olufsen の展示イベント「Mute Swan」を開催。このイベントでは、『Bang & Olufsen「From Spark to Icon」』も会場で閲覧いただけます。会期中に、会場でBang & Olufsen のアンケートにお答えいただいた方の中から数名に、この本が抽選で当たるとのこと。興味のある方はぜひ!