「自給自足」。自らに必要なものを、必要なだけ作り出す。自給自足の能力を持っている人は、どんなシチュエーションにあっても生活できる強さを持っています。衣食住でいうと食の分野での自給自足はよく耳にしますが、僕は住にも、いえこれからは住にこそ必要な能力なのではと感じています。
この連載では、これからの住まいと住み方への、僕なりの展望をお伝えしてきています。「所有すること、所有しないこと」をホテルの生活から考えてみたり、(第17回)、キャンピングカーに新たな住空間を見出そうとトライしたり(第24回)、必要最低限の狭小空間をまず手に入れてみることに価値を見出したり(第34回)。正解はひとつではないはずだし、さまざまなアイデアの組合せかも知れない。もちろん、地球上には様々な暮らしがあり、その土地特有の生活形態があります。また、都市と郊外では暮らしに必要なものも自ずと異なる。たとえば身ひとつで足りるというホテル的な生活は、ある程度インフラが充実していることが前提ですから、田園地帯では難しい。やはり都市部だからこそ成立する暮らし方であり、考え方です。また、未開拓地に乗り込むのであれば、窓と屋根はあるシェルターのような狭小空間をつくるというのも一案だけれども、快適な生活が送れるかというと、胸を張ってイエスとは言い切れません。
僕にとって新たな展望を開けそうな本が、手元にあります。「SELF SUFFICIENT HOUSING」という名のこの本は、スペイン・バルセロナのあるカタロニア州の先端建築研究所が主宰したコンペの案をまとめたもの。文化的発展のために2年に1度開催され、この年のテーマがまさに「自給自足」だったのです。実現可能を前提にせず、想像上の提案が大半ですが、だからこそ未来に思いをはせるきっかけになる案が満載で、僕の頭を大いに刺激してくれました。大別すると、集団生活を営んで自給自足のコミュニティーを形成するアイデアと、地球上にあるエネルギーを効率的に住宅に採り入れるものに分けられて、僕は後者に関心を持ちました。地球上にあるエネルギーとは、日光、酸素、土、微生物などなど。「すでにそこにあるもの」が、自給自足を促すのです。たとえば日光を熱エネルギーに、雨水を生活用水に変えることで、生活が成り立つ。この場合、住宅は住むための空間であると同時に、自給自足を可能にする「変換装置」なのです。住宅自体も地上に建てずに地面を掘って「穴」という空間をつくっておさまれば、温度と湿度の変化をコントロールすることが出来る。
すでにそこにあるものを、上手に変換して取り入れる装置としての住宅。この分野を研究することで、大きな収穫が得られそうです。すでに実践している人もいるでしょうし、研究を進めている方も多いに違いない。各分野の「自給自足」エキスパートと積極的に出会っていきたいと、また決意を新たにしています。
180余りのアイデアが掲載されていて、実現可能かどうかではなく、未来の建築空間を示唆しているのが、かえって僕には興味深いのです。
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