ニシヤマ書店 第29回 Home-Made:CONTEMPORARY RUSSIAN FOLK ARTIFACTS
いまの時代、おもちゃといったら買うものですが、一昔前は自分でつくるものでした。工事現場に転がっている木っ端や、新聞に折り込まれているチラシなどを、自分なりに工夫して遊びの道具に仕立てた憶えがある方、いらっしゃいますよね。それがプラスチックのカラフルなおもちゃが登場し、リモコンにワクワクするようになりました。そしてコンピュータの画面に向かってコントローラを握ることが遊びの中心となり、子供の大事なおもちゃとなっているのが、21世紀の日本。様変わりとはまさにこのこと、というほどの変化です。
でも21世紀になったからといって、世界中すべてが日本のようにものがたくさんあるわけではない。ないところには徹底的にないというのが現状です。物資がない日々のなか、だからこそ自分の手で、必要なものをつくり出そうとする。ゴミとして捨ててしまいかねない身の回りのものや、廃品といったものでも、新たな価値を見出す力が湧いてくる。VLADIMIR ARKHIPOVのHome-Made:CONTEMPORARY RUSSIAN FOLK ARTIFACTSには、ロシアの市井の人たちから生まれた、「小さな発明」の数々が載っています。おもちゃはもちろん、生活に必要な品々を、えっと思うようなものからつくっている。もう使わないスプーンの真ん中をくり抜いてつくったシャボン玉つくり器、ペットボトルに穴をあけてコルクを通した糸巻き器、バスケットボールにハサミを入れてつくられたカゴ……。決して大発明ではないし、万人に必要なものが生まれているわけではありません。孫娘のために、奥さんのために、自分のために生み出された、小さな愛らしい発明で、ユーザーイノベーションのはじめの一歩と呼ぶべき、原石のような存在です。
お金がなくても、ものがなくても、「これが欲しい」「これが必要」という気持があって、ハサミとテープがあれば、自らの手でものがつくれる。前回のINVENTING MODERN AMERICA From the Microwave to Mouseでも触れたメッセージですが、本書ではより身近に感じられますし、第25回で紹介したMakeにも通じるものがあります。ハサミが電動ノコギリになり、テープが強力な接着剤になったら、より大きなものや、精度の高いものがつくれるようになるでしょう。廃品ではなく、きちんと材料を揃えたら、頭の中に描いている「本当に欲しいもの」に近づけるのかも知れません。でも、自分のために、誰かのために、「これがあるといいだろうな」と思う気持ちがあること、それがものをつくる原動力であることを、僕はあらためて強く感じています。
この本を、取材にやってきた編集者やライターのみなさんにお見せすると、例外なく釘付けになり、インタビューそっちのけで見入る。誌面が発する何かを感じ取っているのだろうと、思わず僕も嬉しくなります。
VLADIMIR ARKHIPOV (著)Fuel Publishing (出版:2006/6/15)
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