ニシヤマ書店 第28回 INVENTING MODERN AMERICA
発明家と聞いて、みなさんはどんなイメージを持ちますか? 助手を従えた研究者? コンピュータに向かって黙々と作業を続けるエンジニア? それとも一攫千金を狙ってアイデアを膨らます主婦でしょうか。子供こそ発明者と考える人もいるかも知れません。それは多分すべて正解なのだと、僕は思います。
David E. Brown が著したINVENTING MODERN AMERICA From the Microwave to Mouseという一冊は、アメリカ社会を、ひいては世界全体を変えるインパクトを持った発明と、その発明者を紹介している興味深い内容です。古くは「フラードーム」をつくりだしたバックミンスター・フラーから、コンピュータのマウスを作ったダグラス・エンゲルバート、スティーブ・ウォズニアックの手になるコンピュータ Apple I、世紀の発明と日本でも評判になった、ディーン・カーメンのセグウェイまで。テキストは英語のみですが、写真やイラストを見るだけでも充分に楽しめます。多くの試作品第一号はベニヤ板や誰でも手に入れられる工作用具でつくっていることが、よくわかる。そう、非常に原始的なものなんです。10年20年30年と、発明の瞬間から時を経るにしたがって、商品として世に出たそれらはモデルチェンジを繰り返し、さらなる技術開発が行われ、洗練されていく。なかには電子レンジや人工心臓のように、ある程度の施設や開発費がなければ生まれなかったと思われるものもあります。ですが多くの発明の原型は、実に素朴。そこに必要なのは、自分の「頭」と、ペンを握ったりパソコンのキーボードを叩いたり、ベニヤ板を使って形にしてみるための「指」、このふたつだけなんだということが、本書を通して僕の中でより明確になりました。
発明をするという行為は、特殊な人たちだけがすることでは決してなくて、誰もが出来ることなんだ。世界中で何かが生み出され、でもその大半は発明と呼ばれることなく、生まれては消えていっているのでしょう。しかし、のちに発明と呼ばれるに至ったものも、スタート地点では同じような生まれ方をしているのです。一部のエリートだけが生むものではなく、様々な人種、様々な職種、幅広い年齢の人が、これまでにもたくさんの発明をしてきた。そして彼らの多くは「個人」である。これが大きな特徴です。自分にとって必要なものを、自分の力でつくり出す「ユーザーイノベーション」という行為。僕はその潜在能力に大きな可能性を見出し、空想生活の活動の中心に据えてきました。
アップルのコンピュータ第一号が木の箱に収められていたなんて、ワクワクしますよね。自分の頭と指、そして身の回りのガラクタのようなものたち。そこから生まれる新しい何かがあるのですから。
原始的な試作品の数々が、誌面に並びます。これらが世の中を劇的に変えていく。発明の力を感じる一冊です。
David E. Brown (著) Lester C. Thurow (はしがき) James Burke (序論) Mit Pr (2001年)
※こちらの作品はアマゾンアフィリエイトに登録しております。