空想マガジン
ニシヤマ書店 第27回 Design Like You Give a Damn
前回、リテラシーという言葉と本来の意味について書きました。リテラシーは誰にとっても公平に与えられる機会があるべきなのですが、世界を俯瞰してみたときには、それは非常にまだら模様というのが現実です。

世界は公平ではない。たとえば通貨の価値ひとつとっても、地域によって大きく異なる。アメリカでは、1ドルはチップとして渡すほどのもの、それがアフリカでは1日過ごすのに充分な金額となる。このような違いは、価値観の格差も生じさせ、その結果、備わるリテラシーにも格差が出てしまうのです(どこからどう見るかで、その格差の高低は異なるのですが)。

僕の友人にキャメロン・シンクレアという男がいます。彼はアーキテクチャー・フォー・ヒューマニティという団体の主宰者で、世界の貧しい地域や津波などの災害にあった地域に対して、難民となってしまった人たちに必要な家や建物のアイデアを、世界中の建築家からコンペ形式で募るプロジェクトを行っている。そして建築家と共に災害地に赴き、現地の人たちと一緒に家をつくっていくのです。貧しい地域の人々のリテラシーは低く、彼らが自力で家をつくることは難しい。そこに高いリテラシーを持つ建築家たちがアイデアを携えて行くことで、現地の気候や生活様式にあった家をつくることが可能になるというわけです。活動自体はボランティアだから、建築家に金銭的な利益は生まれないけれども、経験という財産が生まれるのです。

しかし同じ地域で同じ条件で家をつくる機会は少なく、建築のノウハウとして蓄積しにくいのが現状。アフリカで通用したことが、アメリカでは通用しないことの方が多いですよね。それに家は一度つくれば、その後すぐに二度三度つくる必要は生じません。自身も建築家であるキャメロンは、何とかしてノウハウをいかそうと頭を働かせています。そのアイデアのひとつとして、空想生活と連動することを思いついたと知らせがありました。確かに、貧しくなくても、災害がなくても、活かせる設計のノウハウは豊富にあるはずです。部材としてパーツ化したり、パッケージにして安く調達出来るようにして、流通にのせようというのです。それを求める人がいれば、わずかながらでもロイヤリティが発生する。建築家にとっては少額かも知れないけれども自らの仕事につながるきっかけになり、現地の人にとっては同じ額でも大きな収入となる。

僕は、キャメロンのアイデアは、とても前向きな提案だと感じています。そして、少しずつ、いろんなことが、確実につながり始めている気がしているのです。

地球に暮らす60億人のうち、実に40億人もの人は住むところがないという現実。これにどう答えていくべきか、そこにキャメロンと僕の接点がある。キャメロンの活動に興味を持った方は、ぜひ彼の著書『Design Like You Give a Damn』を手に取ってみて下さい。
Cameron Sinclair / Kate Stohr(著) Metropolis Books(2006年)
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