ニシヤマ書店 第23回 アンドロイド
唐突ですが、みなさんはふだん、お金の話をしますか? たとえば友人や会社の同僚、仕事仲間、そして家族がどのくらいの収入を得ていて、どのように使っていて、どれくらい貯金しているのか、互いに話しますか。その機会は多分、少ないのではないでしょうか。お金について、知っているようで知らないことが多いのではないかと思います。そして自分自身はいまの収入で充分なのか、それ以上を欲しているのであればいくら必要なのか。現状と希望の間には、極論を言えば無限の広がりがあります。お金のことをあれこれ考えるのは美徳に反するのでしょうか? そうは思いません。自分にいくら必要かを考えることは、そのために自分が何をすべきかを考えることにつながり、生きていく上で大事なことだと思うのです。
働く、それは大切なことだけれども、その主たる目的が生きるためになってはいまいか。楽しみのため、喜びのために働くような環境にするためにも、お金は大事な存在です。お金を得るには、労働以外にもいくつかの選択肢が考えられます。株などへの投資からの収益、貯蓄額に応じた利息、著作権で得るロイヤリティ、不動産収入などなど。非現実的な話に聞こえることを前提でお伝えすると、35歳までに2億円の貯蓄があれば、年間600万円を生涯にわたって金融機関から受け取ることが理論上成立します。つまりお金がお金を生み出すのです。年間600万円ということは月に50万円使える。単純に割り振れば、家賃、交際費、食費、健康維持、娯楽に10万円ずつ使えます。
不動産収入に関しても、今後は市場が変わりそうです。日本の人口が増えることなく減少の道をたどるとすれば、持ち家を相続する人が増えるでしょう。それを賃貸住宅として貸し出したりすれば、家が利益を生むようになる。本来の意味での「資産」となるわけです。
誤解しないで下さい、働くことを否定しているのではありません。エドマンド・クーパーが著したSF小説『アンドロイド』の舞台は22世紀のイギリス。核戦争に備えて巨大冷凍庫に146年間保管(!)されていた登場人物が見たのは、基本的な生活はすべて政府が保証している社会でした。未来の人たちは、保証されているがゆえに、あまり働かなくなっている。何のために働くのか、目的がなくなっているからかも知れません。明日のパンのために働くのではなく、働くこと自体も楽しむために必要なものとは? 次回はその点についてお伝えしたいと思います。
「アンドロイド」で主人公が送る生活は、フリーダム・オブ・ファイナンス、つまり経済的自由を得た人物が送る人生そのもの。物的に満たされたら、それで本当に満足なのか。その答えがここにあります。
「アンドロイド」
エンドマンド・クーパー (著) 小笠原豊樹(訳) 早川書房(1976年11月)