空想マガジン
ニシヤマ書店 第21回 TOKIO STYLE 創刊号
TOKIO STYLE 創刊号
前回、フィリップ・K・ディックの傑作SF小説『ユービック』の登場人物から着想した、住宅への新たなアプローチを提案しました。住宅も生活に必要なものも、使う分だけお金を払うシステム。すなわち生活の基盤そのものはもちろん、生活に必要なものはまず供給されて、使った分だけ費用が発生するというものです。
僕はジャンルを問わず、活字を読むのが好きです。SF小説の面白さは、過去の人たちがどのような未来を描こうとしていたのかが垣間見えるところ。そこに描かれている未来そのものが、現実の僕たちにとってはすでに過去になっていたりすると、かえってそのギャップにリアルさを感じたりもします。『ユービック』も、過去と現在と未来という時間軸、さらに現実とフィクションが入り混じった情報となっているからこそ、僕にヒントを与えてくれたように思えます。
そこにはビジネスの芽もあるのです。現状の住宅の値段を劇的に安くしたい、安くできるはずだと、僕はこの連載で問うています。住宅産業における工業化は、まだまだ変革の余地があるはず。技術革新によって新たな可能性が開ければ、「300万円で家を建てる」ことが出来るに違いない。それが近い将来可能になったならば、消費者にどのように提供するかという、次のステップが待っています。300万円でつくられた住宅を、ではいくらで売るか。それは販売会社の規模で異なってくるでしょう。たとえば小さな会社であれば、その会社なりの特性を付加しつつ、それなりの金額になると思います。小規模な組織とは対極にある、日本全国もしくは世界的なネットワークを持つ規模の会社であれば、そこまでの利益をのせずとも、提供することが可能となる。豊富なバリエーション展開をして、さまざまな生活を消費者に提案することも出来るはず。
そしていずれの場合でも、『ユービック』が描いたヴィジョンが有効なのです。そう、所有せず、使った分だけ消費者が支払うというシステムです。300万円という破格に安い値段だからこそ消費者にとっては説得力があり、所有しないという形態も受け入れることが出来るでしょう。複数に同時に住む、どんどん住み替える、ひとつに住み続ける、誰かとシェアするといった、さまざまな選択肢から選ぶことができるのも大きな魅力になるはずです。それを受けて企業は、住宅産業における新たなビジネスを構築出来る。つまり双方にメリットがある。
300万円住宅への夢と、「住む」ことに対する意識改革、そして事業として成功するかどうかのヴィジョン。すべてはひとつながりなのです。

TOKIO STYLE - 創刊号
捨てられずに、手元にずっととってあるTOKIO STYLE の創刊号 「ホテルに泊まるといふこと」という特集が、ホテルに住むという事に読めてしょう がない。ホテルは使った分だけ、お金を払う家の延長のような存在。 このホテルの様なサービスが自宅にやってくるのが理想である。

(早川書房)TOKIO STYLE 東京スタイル No.1 Spring 2003 創刊号
出版:東京エンタテインメント通信