ニシヤマ書店 第17回 地球家族 (3)
自分にとって本当に必要なものは何なのか。「生活における必需品」と「人生における必需品」をしっかり見極めることが出来たら、その先に新しい生活があるのだと思うということを、前回はお伝えしました。
それは、単に持ち物を少なくすればいいということではないでしょうし、必需品さえあればいいということでもありません。「生活に対して自分が何を求めているのか、はっきりイメージすること」へ踏み出すための最初のステップと言えばいいでしょうか。
僕がつくろうと挑戦している新しい居住空間は、これまでの「所有」の概念からはずれたものです。「家」に対する固定された考え方から自由になりたいと思っています。持ち家はもちろん、賃貸であっても、住まいを所有するために、僕たちは多くの時間とエネルギーを費やしているのが現状です。新しい居住空間の出現によって、そのエネルギーを他に使うことが可能になったら……? 自分が本当に何をしたいのか、何のために時間とお金を使いたいのか、新たな展開が開けると思うのです。
とはいえ、自分にとって本当に必要なものは何なのかを自覚しなければ、新たな展開が目の前に出現しても無用の長物と化すことになってしまいます。だから「必需品」をきっかけに自分と向き合おうと提案したいのですが、そういう僕自身も、日々の慌ただしい時間の中で向き合うのは結構難しい。このジレンマから抜け出すために、出張先でのホテルで過ごす時間を僕は有効に使うようにしています。夏から秋にかけて仕事で海外に行くことが多く、安普請のモーテルから一流といわれる五つ星級のホテルまで、さまざまなクラスの宿に泊まりました。クラスが違えば、部屋の広さはもちろん、しつらえも設備の充実度も違います。タンクトップとサンダル履きでいることが安心につながるホテルもあれば、スーツを着ていることで気分が落ち着くホテルもある。
いつもと違う環境の中で快適に過ごすためには、ホテルに従事する人たちといかにコミュニケーションが図れるかが大きなポイント。つまりこちらのリクエストを相手に伝える術です。糊のかかっていないシーツでなければ安眠できないのであれば事前に伝え、何より窓からの景色を大事にしたいのであればその旨を。
何をしてもらって、何はしてもらわなくても大丈夫か。リクエストをきちんと伝える。それに対してチップを渡す。こちらが明確な意志を持って接することで、先方はどんどん環境をチューニングしてくれます。この術をマスターし、意識して積極的に行うことで、快適の度数はグンと上がりますし、その結果自分と向き合うことにもつながります。
自分の家でなくても、自分の家のように快適に過ごすために必要なことのディテールが、ホテルで過ごす時間から見えてくると思いませんか。ぜひみなさんも実践してみて下さい。
ブータン 1993年
日本に暮らす僕たちに比べて、何と少ない必需品! しかしたくましさと充実した時間がこの写真一枚から伝わって来る気がしませんか? 家族のきずなも伝わってきます。食料の安定供給をはかりつつも、食べるものを家族で育てるということを両立できるライフスタイルをなんとか実現できないだろうか……そんなことを考えさせられます。
アイスランド 1993年
生活の必需品としてのペット(ここでは馬だが)そして音楽。家族が共に苦労と喜びを分かち合えることほど、大切なものはないと思う。このアイスランドの家族も決してモノもちではないが、いかにも豊かです。
出典、表紙写真共に 地球家族 TOTO出版刊
ニシヤマ書店第二回でも紹介しています。