ニシヤマ書店 第9回 わたしはロボット
一、 ロボットは人間に危害を加えてはならない。また何も手を下さずに人間が危害を受けるのを黙視していてはならない。
二、 ロボットは人間の命令に従わなくてはならない。ただし第一原則に反する命令はその限りではない。
三、 ロボットは自らの存在を護らなくてはならない。ただしそれは第一、第二原則に違反しない場合に限る。
この「ロボット工学の三原則」をつくったのは、科学者でもあり20世紀を代表するSF作家アイザック・アシモフと、編集者のキャンベルです。21世紀を迎えた現在も、世界中の研究者たちはこの原則にのっとってロボット開発を続けているのですから、アシモフは揺るぎない普遍を半世紀以上前に見出した「発明家」であったとも言えます。
この三原則を軸として、名作「わたしはロボット」は物語を繰り広げます。主人公はロボット心理学者の女性。彼女が大学生だった2003年から82歳でこの世を去る2064年までの間、ロボットがいかに進化し、人間との関係を築いていくかを、彼女の視点を通して描かれている。進化するというと、家電製品の機能が上がるようなイメージを抱くかも知れませんが、いかに「精神構造」が埋め込まれていくかが肝要なのです。ロボットは人工的につくられた「心理」であり、自らの意思で動けるものがロボットなのです。でもそれは、絶対的に人間ではなく、人間のためにしか働かない。創造主が我々人間をつくったのであれば、人間はロボットの創造主たり得るかという大きな課題を、この本はぶつけているのです。
この先の百年で、ロボットは確実に人間にとって一番身近な機械となることでしょう。「空想生活」においても、ロボットは無縁ではないかも知れません。開発の途上である現代においては、ロボットを司る公的なルールは存在せず、かたちやサイズといった表面の設計が先行している。でも本当に議論すべきはその精神のあり方だと僕は思うのです。どういう精神構造を持たせるか、ここに全力を傾け、設計していくべきではないでしょうか。それはつまり、アシモフたちの三原則が大前提となるわけです。
近い将来、僕たち人間が直面する問題を示唆する内容を非常に多く含んでいる内容であることは断言できる一冊です。みなさん、ぜひ手にとって下さい。
アイザック・アシモフ著 伊藤哲訳
東京創元社 創元推理文庫