ニシヤマ書店 第7回 夏への扉
SFファンにはおなじみの一冊、「夏への扉」を今回はご紹介します。ロバート・A・ハインラインが1957年に発表したこの小説は、アメリカSF界における最高傑作のひとつと評されています。
時は1970年。主人公である技術者は家事ロボット(原文では「ハイアードガール」)を発明しました。しかし会社の共同経営者である友人と恋人に裏切られた主人公は復讐を誓って冷凍睡眠、タイムトラベルしてたどり着いたのは30年後の未来=つまり2000年。タイムパラドックスという当時とても斬新だったテーマは、今読んでもとても面白い。というか今読むからこそ分かる面白さがあります。なぜなら1970年も2000年もすでに過去です。「昔の未来」を読むことで、昔の人が夢見た未来がどこまで実践できているのかがわかる。
主人公が発明した家事ロボットとはすなわち掃除機なのですが、ハインラインは2000年にはオートメーション化されていると想定しているものの、実際はいまだに手で動かしています。でも掃除機の出現で家事の労力が軽減されたのは大きな発展です。不可能だったことを可能にし、商品化することで生活が改善される、それは僕たち「空想生活」が目指すところです。「未来に投資する」事の大事さを、僕はこの一冊から強く感じるのです。
アンチエイジングについても本書は触れていて、現在の健康ブームやスローライフ、さらにはプチ整形に通じますよね。きれいに老いたいという欲求にこたえるビジネスは急速に拡大していますが、一歩見誤ると人間は大きな間違いをしでかすかも知れないという危惧も僕は抱いている。
未来への道は幾通りもあるはず。審美眼を磨きつつ、自制心も保ちつつ、よりよい生活を送るための未来をつくりだすことを目指したいと思っています。
出版社:早川書房
著者:R・A・ハインライン
訳:福島正実