ニシヤマ書店 第4回 ティファニーのテーブルマナー
僕は幼少時から高校を卒業するまで、父の赴任先である南米コロンビアで過ごしました。中学生のあるとき、父から手渡されたのが「ティファニーのテーブルマナー」です。百ページに満たないこの本は、みなさんよくご存じの宝飾ブランド、ティファニーが編纂しています。ティファニーは宝飾だけでなく、テーブルウェアのコレクションも数多くあり、アメリカ・ホワイトハウスでも使われるほど。そして映画「ティファニーで朝食を」もありますね。食文化と実は深くつながっているブランドといえます。
イラストと手短な言葉で、食事中の作法の一通りがわかるようになっているのですが、手にした当時は「オレンジを丸ごとフォークで刺して、ナイフでむいていく機会なんてないのに……」と戸惑ったことを思い出します。今だって何本もカトラリーが並ぶ食事はめったにしませんが、この本は僕に多くのことを教えてくれました。フォーマルな席だから作法が大事なわけではなく、どんな時も、食事を共にする相手を不快にせず、いかにコミュニケーションするかが大切なのだと、本書は伝えているのだと思います。
「片手にナイフかフォークを持ったまま、他方の手で口をふかないように注意しましょう」「口をあいたまま、食べ物をかんではいけません。(中略)会話の妨げにもなります」「骨付きのチキンは、ピクニックでないかぎり手に持って食べてはいけません」「大声で自分の意見を述べてはいけません。自分の意見よりも、人の話に興味深げに耳を傾けるのが、会話上手の秘訣です」……。正しい作法を知ることは、食事の時間を相手と一緒に楽しむためのパスポートのようなもの。作法の心得が分かったら、作法を破ることが出来る。「しかし、作法を破るには、十分社交知識の心得がいることを忘れないで下さい」という結びのメッセージは、テーブルマナーだけでなく、様々なシチュエーションに通じるものだと思いませんか。
作法や躾というと親が教えるもの、となりがちだけれども、自分で自分をしつけることも大いに有効です。子供へプレゼントするのに最適な一冊であり、自分自身へのギフトにもおすすめです。