空想マガジン
ニシヤマ書店 第2回 地球家族
地球家族
寝て、起きて、食事して、働いて、友人に会い、読書をして、たまにはゆっくり映画を見て、また寝て、起きて──。毎日の生活パターンは、一人一人もちろん違うけれども、人間が生きるために行うことに、大きな違いはないと思ってこの「地球家族」のページを開いたら、大きなショックを受けるでしょう。南アフリカ、イタリア、ブラジル、イギリス、タイ、ウズベキスタン、日本……。複数のジャーナリストが世界30カ国を訪ねて、ごく中流の家庭に行き、家族の持ち物すべてを外に出して一枚の写真に収めたこの本。僕がとにかくショックだったのは、日本人家庭のものの多さ。イギリスやドイツの家庭もものに囲まれているにはいるけれども、何かがハッキリと違う。日本だけが特異なのです。ものを「選ばずに」買い続けた結果なのだろうか、と考え込んでしまいました。
この本は、「ものを通してみるコミュニティ」というメッセージを持っているのだと思います。たとえばソファ。隣同士に坐って語らうことで、大切な時間を共有できます。たとえば炊飯器。ご飯を炊くのが簡単になった分、食事の時間をながく取ることが出来ます。家族みんなが楽器を操ることが出来たら、ホームカルテットだって可能です。冷蔵庫がない地域では、食べ物を長期間保存することが出来ません。だから豚を一頭解体したら、地域のみんなで集って食べるのです。ものがあることも、ものがないことも、みんなが集まるきっかけ作りになっている。中国では、一台のテレビを囲んでみんなが嬉しそうにご飯を食べています。でも日本では、テレビはもうその役割を終えてしまっている。ソファがあっても、そこに集おうというアクションは起きない。炊飯器でご飯を炊かなくても、近くのコンビニエンスストアでお弁当を買えばことが足りてしまう……。今大きな課題となっている引きこもりやニートといった現象につながるような気がするのです。
僕たちは「空想生活」で、「欲しいデザインを手に入れよう」を合い言葉にものを作っています。でもその奥には、「どういう時間を過ごすのか」を考えるきっかけを作りたいという思いがあるのです。人間の生活に必要なもの、ものが作り出す時間、誰と一緒に使うのか──この本から読み解くように、いろいろなことをみなさんと考え続けていきたいと思っています。
TOTO出版刊・1988円