空想マガジン
ニシヤマ書店 第1回 TOKYO STYLE/都築響一
TOKYO STYLE/都築響一
「空想生活」を運営するエレファントデザイン代表者であり、「欲しいデザインを手に入れたい」ユーザーとメーカーを結びつける橋渡し役である西山浩平。このコーナーでは、架空のショップ「ニシヤマ書店」の店長と化した西山がおすすめ本をみなさんにご紹介!
まず一回目である今回、ぜひお見せしたいのが、「 TOKYO STYLE 」です(都築響一著)。93年、出版と同時に手に入れ、これまで何度ページを繰ったかわかりません。どの部屋にも既視感を覚え、他のインテリア写真にはないリアルを感じさせ、写真に人物は一切うつっていないのにそこに暮らす人の「生活」そのものがわき上がってきます。見覚えのあるモノたちが、それぞれの部屋で異なる個性を放っているのも面白い。僕が必ず見入ってしまうのは、1.ワードローブ、2.キッチン、3.テーブルなど天板の上に載っているものたち、の三点セット。1からはその人の趣味が、2からは何を食べているのかという生き方に近いものが、そして3からは家に帰ってくつろいでいるときにその人が何をしているかが分かるからです。
図面や何もない部屋を見たときに想像する「自分がおくりたい生活」と、実際の毎日にはギャップが生じます。それはすべて、自分の持ち物のせいだと僕は思う。何を持ってどのように暮らすか、それは大げさではなく人生そのもので、部屋こそその人の履歴書と言えます。この本の写真には、住人の生活そして人生の堆積が写りこんでいる。著者の都築さんはそういう意味で、考現学の祖である今和次郎や、ドイツの考古学者でギリシャ神話の伝説の都市「トロイア」が実在することを発掘することで証明したハインリッヒ・シュリーマンのような存在と位置づけていいのではないかと思うのです。本書は、事実の蓄積から時代や生活を浮かびあがらせ、他人の生活を見ることで自分の生活を「気づかせる」貴重な資料でもあるのですから。
「空想生活」は、現実の生活に対して「こういう商品があったらもっと快適なのでは」という提案を続けています。いわば現実の対極であり、言い換えれば現実の生活こそが「空想生活」の原点なのです。「 TOKYO STYLE 」は、僕たち「空想生活」の大本のような一冊です。
(大判は絶版。文庫版が筑摩書房より発売中)