
パール・スミス・マイヤーさん
誰でも一度はLEGOで遊んだ記憶をお持ちではないでしょうか。 LEGOは、今年50周年を迎えるデンマークの企業。 アタマに描いたあんなもの、こんなものを現実に形あるものにする、 そんな工程に最適なツールとして、LEGOのカラフルなブロックは親しまれてきました。 そのLEGO社の新規ビジネス戦略を取り仕切るパールさんが来日、空想オフィスを訪れました。 今回は彼が見据える30年後の未来について、お伺いします。
「例えば、お友達の1人に、すごく素敵なお店を教えたとします。 その話を聞いて、次はそのお友達もあなたとそのお店に一緒に行くかもしれませんよね? 世の中はそのようにして動いているんです。 あなたが、他の人もぜひ一緒に参加したくなるような事柄を作り出せば、 それはあなた1人だけの出来事ではなく、他の人々を取り込み、結果的にみんなのストーリーとなっていく。 このようにして、あなたは小さいながらも1つの未来を形作ることができるのです。 これと同じことが、ちょうど今ネット上でかなりのスケールで起こっていますよね。」
「ここで興味深いのは、そのような動きは大企業が仕掛けているのではなく、 個人から自然発生的に生まれている点です。 わたしが予測する未来では、世界は今よりもさらに<個人>が基盤になっていて、 人が人と繋がる。ここ100年余りの世界的な工業化とそれに続いたグローバライゼーションは、 常に<国vs.国>、もしくは<企業vs.企業>といった、<組織>が世界の動きを作ってきました。 しかし、今それは変わりつつあります。企業は自社のあらゆる業務を外部に発注するようになり、 組織が分解し始めているのです。」
「未来は、ちょうど100年前の状況に似てくるのではないでしょうか。 たとえばあなたが未来のテーラー(仕立屋)だとしたら、 あなた自身が直接お客様の要望を聞き、最適な生地を調達し、 そのお客様1人の為だけのオーダーメードのジャケットを作っても、採算が取れるようになる。 マーケティングされた服を大量供給する歯車の一部だけを担うのではなく、 あなた一人で全ての供給工程を手掛ける、そんな昔のクラフトマンシップが復活しつつあり、 またそれが最新のテクノロジーの力で、(ビジネスとして)可能になる兆しが見受けられます。 戦前のデンマークには40~50程のラジオ製造会社がありましたが、現在ではほんの数える程度しかありません。 だからといって画一的な商品だけが並んでいるわけでもありません。 最近のテクノロジーとグローバリゼーションは、 個人であっても大企業が使っているのと同じ技術や素材にアクセスすることを可能にしました。 その様な動きも組み入れた形で、万人の為ではない、小数のニッチな要望に合わせた小規模な生産ラインを、 同じ大型製造会社が手掛けるまでに進化しつつあります。 これは実にローカルな地元産業のように聞こえるかも知れませんが、 同時にグローバルマーケットでの展開の可能性も大いにあるのです。 ローカルブランドが世界的ブランドに成長するということも、十分想像できることなのです。」
「今よりもさらに多種多様な商品の製造が可能になるのと同じように、 テクノロジーの進化は、国や信仰、企業などといった現在の私達を束ねる枠を越えた、 さらに多様なグループ形成を可能にすることでしょう。 そして、それらのグループは、個人の興味や価値観といったレベルを基準に形成されるはずです。 現在、myspaceやfacebookに見られるような、 ネット上で同じ趣味を持つ人々がバーチャルなコミュニティーを無数に作っていますが、 30年後は、そのようなグループがネット上ではなく現実世界で集まり、ひとつの社会を形成する、 まさに<部族>となるのです。例えば、同じアウトドア・ライフスタイルを共有する人々が世界中から集まり、 ノルウェーの海岸沿いに集落を作るかもしれません。 グローバライゼーションという言葉はビジネス用語だと思っていましたが、 もしかすると本来は人々が新しい方法で集まる事を指すのかもしれませんね。 人間というのは、<部族>として生活する生き物なのかもしれません。」
「さらに、その様にして形成された部族は、同じ価値観を共有しつつも、 それぞれのメンバーが持ちよるスキルはさまざま。 未来の世界では、いまいちポリシーに賛同できない企業で生活費を稼ぐために働くのではなく、 共に暮らす自分と同じ価値観をもった社会の為に、自分のスキルを生かして生活することができるようになると思います。 ハッピーな生活だと思いませんか?」
「私が見出したいのは、どのようにテクノロジーを駆使すれば、そのような部族の発起し、 コア(核)となる人々をインスパイアすることが出来るのだろうか、という点です。」
「僕はいつも色んなアイディアが浮かぶんですが、それらをいったいどうしたら良いのか、分からなかった。 単にアタマの中に浮かんだアイディア、それだけでは価値がないんです。 アイディア自体には、方向性というものがない。だから放っておかれると消えてしまいます。 それに気がついて、私は自分のアイディアを過度に保護するのをやめて、共有することにしたのです。 そう考えるうちに、浮かんでは消えるこのアイディアというものを、 もっと生産的で有効利用できるものにする為のシステム、というか構造、コンセプトに辿り着きました。」
「CUUSOOは、私が辿り着いたコンセプトといくつかの共通点を持っています。 人々のアイディアを集めるためのシステムとして働き、 また人々はそこにインプットして、さらにそれを育てることが出来る。 その結果、参加したみんなが得をする、というもの。 冒頭でお話したように、もしストーリーの内容が他の人々も参加したくなるような魅力をもっていたとしたら、 その魅力を理解する人が続々と集まり、そして結果的に<部族>が形成されるのです。 そう遠くない未来、私達は同じ価値観を持ち、お互いの知恵を出し合い、 社会を良くすることができる、理想的なご近所さん達と住む。 そこでは、給料を得るためだけに与えられたノルマをこなす部分的な貢献ではなく、 自分が暮らす社会に対してひとりの人間として貢献できるのです。 このコンセプトは私達をそのような未来へと方向づけるものです。」
「このコンセプトは、まだまだ初期段階のものですが、 私はぜひみなさんとこのアイディアを共有したいと考えています。 だいいち、これは私だけの発案ではありません。 例えば、西山社長はそれを<CUUSOO>と名付け、すでに世に送り出されています。 私達の誰もが、世界の未来を変えるかもしれない、自分のCUUSOOストーリーを持っているんですよ。」
